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福岡家庭裁判所小倉支部 昭和60年(少)1724号 決定

少年 K・I(昭和45.4.7生)

主文

少年を教護院に送致する。

理由

(非行事実)

少年は北九州市立○○中学校3年在学中であるが、昭和59年秋ころから恐喝、家出等の問題行動が生じていたところ、昭和60年4月、3年生に進級してからは、ほとんど家出状態で怠学を続け、年長の無職の少年と行動を共にしており、その間単車盗、単車の無免許運転なども行つていて、保護者の正当な監督に服しない性癖があり、正当の理由がなく家庭に寄り附かず、その性格、環境に照して、将来窃盗等の財産犯罪等を犯すおそれがある。

(法令の適用)

少年法3条1項3号イ、ロ

(処遇について)

少年は、実父母間の第2子長男として、福岡県中間市において出生したが、実父は定職につかずギヤンブルにこり、そのため実父母は昭和47年10月13日(少年2歳時)離婚し、少年は姉と共に実母に育てられたが、その実母が昭和53年9月17日(少年8歳時)交通事故で死亡したため、以後少年は姉とともに母方祖母の許、父方祖父母の許と転々とし、昭和57年4月(少年12歳時)からは実父と継母の家庭に引き取られたが、実父と心的交流なく、継母とも折合いが悪いため、家庭で情緒的満足を得ることができず、友人との遊びに耽ることで一時的心的安定をもとめて、家出、怠学状態を続けているものと認められ、現在実父、継母とも少年の指導に自信を失い、引取りに消極的であり、又少年にも実父に対する根強い不信感があるため、少年を現段階で家庭に戻した場合、落ちつけず、再び家出怠学状態になり非行性を強める危険性が大きく、又他に適当な引取り先も見当たらない。よつて、少年を教護院に送致するのが相当である。

ところで本件は北九州市児童相談所長から、少年につき強制的措置が必要であるとして、少年法6条3項により送致されたものであるが、強制的措置を許可した場合、少年は国立武蔵野学院に入所の予定であるところ、少年の上記の問題の解決のためには実父、継母との間の信頼関係の回復が肝要であるため、面会等の容易な施設に入所させるのが相当であること、少年は児童相談所の一時保護施設を無断外出したことがあるが、今後心的安定を得て施設に落ちつく可能性があり、強制的措置の必要性は必ずしも高いとは認められないこと、非行性についても未だ高いとは認められないことなどを勘案し、強制的措置は許可しないこととするが、本件送致には予備的にぐ犯の通常の事件送致が含まれていると解せられるから、少年法24条1項2号により主文のとおり決定する。

(裁判官 井戸謙一)

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